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今回の記事では、メンタルヘルスと栄養の関係について書いてみました。
私自身、適応障害の治療のために約3年間心療内科に通院しました。今は回復して元気になりましたが、一番症状が重かったときは本当にきつかったです。
さて、ある程度回復してから思い立ったことがあります。
管理栄養士として年間700~800件程度の栄養相談を行っている私が考察してみました。
実際の食品の選び方やオススメ食品も紹介しています!
メンタルと栄養って関係あるの?
「こころ」も「からだ」の一部
「からだ」の疾患は薬を飲んだり、場合によって手術などで治すことができます。
もちろん医療に例外はつきものですが、画像診断や術後の経過などを見ながらある程度は今後の予測を立てることができる例も多いです。
が、こころの病気はちょっと違います。
検査では状態を把握することはできず、医師や心理士と患者の間での会話がメインで治療を進めていきます。
治療方法などの違いから、メンタル疾患と他の疾患は全く別物で、体のコンディションとも関係ないように思われてきましたが、その流れもすっかり変わってきました。
「精神栄養学」という分野もあり、学術的な研究も進んできています。
また、メンタル疾患にはいくつものホルモンが関係しており、そのホルモンを作るためには各種の栄養が必要です。
そう考えると「こころ」も「からだ」の一部であり、疾患としてある以上は栄養学にもできることがあるということ。
劇的な回復はなくとも、決して無力ではないということです。
難しいことを考えなくても、ただ美味しいものを美味しく食べられたらそれだけで楽しくなりますし。
さらに、うつ病などでは脳の神経伝達物質が減少すると言われており、脳に関する病気と思えばそこまで特異な立ち位置ではないのでは・・と思います。
症状が重いと食事量が落ちやすい
メンタル疾患では身体的な症状が出ることがほとんどです。
何の症状にしろ、心療内科で診断が出る頃には自覚症状は強くなっていて、既に日常生活に支障が出ているケースが多いと思われます。
頭痛やめまい、睡眠障害などの他、消化器症状や食欲減退・過食など食事に関係ある症状も多く、現れ方は人それぞれです。
参考:「適応障害」|いりさわ心と体のクリニック・うめだ心と体のクリニック
症状が強ければ食事どころじゃなくなる
感じる症状が強いほど、食事にエネルギーを割くことが難しくなります。そもそも食欲自体が落ちていることも多いでしょう。
また、食べられたとしても少量だったり、お菓子類のみになったりすることも考えられ、絶対的な栄養不足に陥りやすいと思われます。
代謝も落ちてくるので、食事量が少ないのに体重増加がみられるなど身体的な変化にもつながりやすく、メンタル疾患の進行と生活習慣病のリスクを相互に上げてしまうことも知られてきました。
参考:「「精神疾患」と「生活習慣病」について」|銀座泰明クリニック
私も全然食べられませんでした
実際のところ、私も食欲どころか起き上がることも難しい時期があり、体重がトータル10kg以上減りました。
食べたとしても、スープを一口とか、チョコレートを1個とか、お世辞にも「食事」とは言えないものばかり。とりあえず口に入れたってだけで、美味しくもなんともありませんでした。
かと思うと、夜中に突然ポテトチップスが食べたくなり、我慢できずに深夜のコンビニに買いに行ったこともあり…。
今思うと「異常だったな」と思う食行動がありましたね。これも人それぞれなので何とも言えませんが、いろいろな部分がコントロールできない状態に陥っていたのは間違いないです。
食事療法が確立されているわけではない
他の生活習慣病であれば、それぞれに食事療法が確立されています。
新しい研究が日々行われていて、情報はどんどんアップデートされていますが、体の基本の機能は変わらないために食事療法も基本は変わりません。
それと比較すると、メンタル疾患には確実な食事療法がないと言ってもいい状況です。
私自身が患者になって分かったことですが、たとえ食事療法が存在したとしても、それを実践できるくらいならかなり回復している証拠。一番ツライときには難しい事は考えられません。
メンタルに関係するホルモン作用をサポートする食べ方を、できる範囲で実践していくのが最善です。
食事を用意してくれる人が周りにいたら、その人に頼んでみるのもいいかもしれません。
どちらにしろ、焦らずにゆっくり構えて、効率よく栄養が摂れるやり方をコツコツ積み上げていくクセをつけていくといいかと思います。
メンタルに大切な栄養素
今回はメンタルの視点から、いくつかの栄養素を挙げてみます。
タンパク質
タンパク質は、体のあらゆる部分を構成する栄養素です。
筋肉や臓器など分かりやすいものもありますが、メンタルヘルスに関連の深いホルモンや「神経伝達物質」もタンパク質から作られます。セロトニンやドーパミンなどですね。
セロトニンは、メンタル疾患について検索しまくった方なら聞いたことがあるのではないでしょうか?
ストレスに遭遇すると「ノルアドレナリン」というホルモンが出て、心拍数を上げたり血液量を増やして活動的にして、ストレスに打ち勝とうとします。そして、乗り越えた後は「ドーパミン」というホルモンが出て、幸福感や達成感をもたらします。
この2つのホルモンのバランスを整えてくれるのが「セロトニン」です。セロトニンが不足すると、このバランスが崩れてしまって平常心が保ちにくくなるとされています。
「こころがザワザワする」「落ち着かない」「急に悲しくなる」など、メンタル疾患がある人に多いこころの動きは、まさに「セロトニン不足」といってもいいかもしれません。
セロトニンの神経系に作用する薬(セルトラリン、パキシルなど)は一定の効果が見られることから、心療内科の分野ではよく処方されています。
その手助けとして、ホルモンの材料になるタンパク質をしっかり摂ることは重要です。
また、心身にストレスがかかる状態では、ストレスに対抗するために通常よりも多くのタンパク質を消費します。
たくさん食べられなくても、タンパク質が多く含まれる肉・魚・卵・大豆・乳製品などを優先的に食べるようにするといいでしょう。
トリプトファン(アミノ酸)
前の項目で重要だと書いたホルモン・セロトニン。
セロトニンは、脳内でアミノ酸の一種である「トリプトファン」から作られます。
タンパク質は、アミノ酸がたくさんつながってできている物質で、その材料やつながり方の違いで区別します。
アミノ酸は体の中で作れるものもありますが、中には合成できず、食べ物からでないと摂れない「必須アミノ酸」という種類があります。
セロトニンの材料であるトリプトファンは、その必須アミノ酸なので、食事から摂る必要があるんですね。
魚・肉・大豆製品・乳製品・卵・ナッツなどに多く含まれます。
ちなみに、ドーパミン・ノルアドレナリンは「チロシン」というアミノ酸から作られます。チロシンは体内でも合成できますが、青魚や豚肉・大豆製品に多く含まれます。
アミノ酸をしっかり摂るには、やはりタンパク質をしっかり摂る必要があるということですね。
鉄分
鉄分が不足すると、血液中のヘモグロビンが作られにくくなります。
ヘモグロビンは、酸素をくっつけて全身に運んでくれる役割がありますので、これが不足すると脳へ酸素を届ける力が弱まり、脳細胞の働きも鈍くなってしまいます。
また、食べたものをエネルギーに変える力も弱まるので、体全体の活動量低下にもつながる可能性があります。
鉄はもともと吸収しにくいミネラルなので「多く含まれる食品を食べる+吸収を助ける栄養素を一緒に食べる」の二段構えが大切。
多く含まれるのは、赤身の多い肉類や血合いのある魚(ぶりなど)が一般的です。ほうれん草やひじきなどの海藻類も多いイメージですが、動物性食品に含まれる鉄分の方が吸収効率が段違いに良いのです。
また、鉄分の吸収を助ける栄養素は「ビタミンC」や「クエン酸」です。これらの栄養素は、体内で鉄の形を変えたり(還元)、包み込んで吸収しやすい形にする(キレート作用)働きがあります。
肉や魚料理と一緒に、フルーツやお酢など酸っぱいものを食べるといいでしょう。
ビタミンB群
ビタミンB群は、数あるビタミンの中でも仕事がたくさんできる優秀な物質です。
トリプトファンからセロトニンを合成するときにはビタミンB6が必要になります。
また、食べたものをエネルギーに変えるサイクルではビタミンB1が必要になります。
ビタミンB6は玄米・豚肉・にんにく・しょうが・青魚のサンマ・イワシなどに多く含まれます。
豚肉にはビタミンB1も豊富に含まれています。
ちなみに、豚肉とにんにくのコンボは最強なんです!
ビタミンB1は水に溶けやすい性質があり、調理している段階で出ていってしまうことも多いのですが、にんにくに含まれる「アリシン」という成分がビタミンB1とくっつくことで、外に出ていくのを抑えて吸収しやすい形に変えてくれます。
「スタミナ回復には豚肉とにんにく」というのは、非常に合理的な理論なんですね。
がっつり食べたい日にはぜひ豚肉&にんにく料理を!
ビタミンD
ビタミンDは、カルシウムや骨の代謝に重要な役割を持っていることが広く知られてきましたが、近年ではメンタル疾患との深いかかわりが分かってきました。
ビタミンDにはセロトニンの量を調整する働きがあることが分かりました。
ただ、ビタミンDは世界的に摂取不足と言われており、特に日本人の摂取量は極めて低いという調査結果が出ています。
ビタミンDが多く含まれているのは、干し椎茸やきくらげなどきのこ類の他、内臓ごと食べられる小魚などです。
確かに、日常的に欠かさず食べるものか・・と言われたら、そこまでメジャーな食べ物ではないですよね。
が、実はビタミンDは体内で作れるのです。
紫外線が体内にあるビタミンDの前駆体(一歩手前の物質)に作用してビタミンDが合成されます。また、それと同時に「抗菌ペプチド」というものの合成も促進されるので、免疫力アップにもつながります。
休職中にお散歩をする習慣がある人もいますよね?病院でもお散歩を勧められる人もいるのではないでしょうか?
冬に抑うつ症状が悪化する「冬季うつ」というものがありますが、これは日照時間の短縮によってビタミンDの合成が鈍くなることも原因の一つと言われています。
これを機に、ほんの少しでも外に出る機会を増やしてみたらいいかもしれません。
参考:「冬に欠かせないビタミンD」|ブレインケアクリニック
まとめ
ここまで書いてきましたが、この記事が役に立つのはある程度気持ちが回復した後のことでしょう。
今はそれどころじゃない人もいるかもしれません。そういう人は、今は自分のこころを休ませることに専念してください。
私も今でこそ何とかなっていますが、ひどいときには水も飲めずに痩せる一方でした。
いつか必ず「何か食べたいな。お腹すいた」と自然に思える日が来ます。ゆっくりいきましょう。
そして、食事がしっかり摂れるようになった人は、体が喜ぶものを摂ってあげるようにしてください。
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体の健康がこころの健康を呼んできてくれると、私は思います。
この記事が、皆さんのこころと体に少しでもお役に立ちますように。